『“善”か“悪”か』
「優しいね」と言われると
わたしの中で切り離された
優しくないわたしが悲鳴をあげた
「かわいいね」と言われると
わたしの中で切り離された
かわいくないわたしが虚空を見つめた
「善い子だね」と言われると
わたしの中で切り離された
いじ悪いわたしが暗闇で膝を抱えた
「積極的だよね」と言われると
わたしの中で切り離された
いつも不安なわたしが押し潰された
「笑顔がすてき」と言われると
わたしの中で切り離された
笑いたくないわたしが作り笑いを始めた
そうして選ばれない方のわたしが消えて
本当のわたしが半分になりました
“善”か“悪”か
“美”か“醜”か
“敵”か“味方”か
“白”か“黒”か
なんでも分けてしまう社会だから
いつの間にか半分の力しか出なくなって
今日も薄っすらと溺れています