2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧
『もちろん』 もういちど、雨は降りますか もちろん降るでしょう そのために風は吹くのですから そのために雲は流れるのですから 太陽を浴びられず悲しそうな花も 雨には雨の喜びがあると知っています もういちど、雨は止みますか もちろん止むでしょう その…
『イイワケ』 「そんなのただの言い訳じゃん。」 そうだよ、言い訳だよ、タダノイイワケ。 たいしたことのない安っぽい言葉で、 なんとか形を保っている、 たった、それっぽっちの、私。 そんなに昂らせて、あなたは私に何を見たいのか。 他人が思い通りに動…
『川面を渡る』 現実は真摯に歳を重ね、 社会は更なる成熟を求め、 それらとは裏腹に僕は前進を拒んだ。 「このままで。」と言った僕に絶望して、 水面でうねる銀色のひとつひとつが叫んでいる。 慰められているのか、拒まれているのか。 水の中であろうと外…
『そうしたいんだけどね』 近しい未来と遠くの未来 ご利用は計画的に 毎日毎日同じおはなし 先を見据えよ 老後を見据えよ そうやって生きて死にたくなる人 いまは、明日を見据えて眠るべきとき できないんだから死ななくていいよ 他人のリズムで生きられるい…
『潤ったなら』 五月の風がやわらかいのは、 つまり、湿度なのだろう。 運命だなんて不確かなものを 本気で信じたりはしない。 それくらい大人になってしまったけれど、 ふと「これは運命かも。」と思ったとき、 妙にココロが腑に落ちたというか。 「それで…
『じっくりことこと』 じっくりと味わいましょう。 子を育てる母のように ノンナの作るスープのように 魔法使いの秘薬のように じっくりと時間をかけたなら そこには愛が生まれます。 だれかを好きになったなら じっくりと愛しましょう。 かつてあなたが愛さ…
『うさぎちゃん』 うさぎに生える毛を剃り落とすのは きっと許されないだろう だけどなぜか わたしの表面の毛は 生えることを許されない なんかごめんね。 うさぎだったら痛いよね。 人間だけど痛いもんね。 だれがコレを身嗜みと言い始めたのか でも、しか…
『ここはボクがいないはずの場所』 これは、たぶん、いいものだ。 これは、たぶん、いいものだ。 あとでじっくり味わおう。 あとでじっくり味わおう。 そう言って食べなかった菓子 そう言って読まなかった本 そう言って進まなかった夢 期限が切れました。 ゴ…
『悲しみと真珠』 ある夜、だれかが悲しみを捨てました。 抱えきれなくなった悲しみを海に解き放ちました。 それは海とは混ざることなく 雪のようにゆっくりと沈んでゆき、 海の底で貝に宿りました。 人の悲しみを宿した貝が真珠を持つことができるのです。 …
『春の雲』 消せなかった思い出が今日も空に浮かんでいます。 だれか、私のやさしくない部分を愛してください。 やさしいところは私が愛せるので、 私の愛せない部分を愛してください。 やわらかな春の風のような潤いを どうかわたしに与えてください。 けれ…
『おまもり』 わたしがあなたを守りましょう。 怖いものから守りましょう。 弱い自分から守りましょう。 はじめの一歩を踏み出せるように、 背中にそっと手を添えましょう。 大丈夫。 これまでの道のりだって、 わたしは手を添えただけ、 ここまで来たのはあ…
『今宵』 「月が綺麗ですね。」 そう聞こえたはずなのに、 私のことなんて誰も見ていない。 あ、ほら。また。 ささやかだけれど、 声に出すほどの確かな感嘆は、 私のものにはならないらしい。 照らした先にはいくつかの 微笑み合う2つの命。 暖かな空気が少…
『憧憬の先へ』 あの子は行った 私が憧れていた地へ 知らなかった あの子も憧れていたなんて いや、ただの付き合いかも。 聞けない ただ聞いてみればいいのに聞けない 羨ましいが邪魔をする 落ち着け、私。 欲しても手にできない私と 欲することなく手にする…
『ソウイウコト』 これは悲しみです。 悲しみの中でもとても純度の高いものです。 さて、どうしましょうか。 泣きたいですか? 泣きたくありませんか、大丈夫です。 涙とは目からこぼれ落ちる水。 こぼれ落ちるまでは涙とは言いません。 まだ泣いていません…
『二日目の月』 新月が明けた 細い 細い 三日月をみて 殺せるな、と思った 虚ろに照らされた道で 立ち尽くす僕に 愛をささやく人は ついに現れなかった それでも月の光は いつもと変わらない優しさを たっぷりと浴びさせる はじまるよ、と誰かが言って ひん…