よかったら詩、読んでくれたら嬉しいです。

詩を書いて生きていたい。 文章はたくさん書くと上手くなると聞きました。詩も同じなのでしょうか?

悲しみと真珠 [詩]

 

『悲しみと真珠』

 


ある夜、だれかが悲しみを捨てました。

抱えきれなくなった悲しみを海に解き放ちました。

それは海とは混ざることなく

雪のようにゆっくりと沈んでゆき、

海の底で貝に宿りました。

人の悲しみを宿した貝が真珠を持つことができるのです。

真珠となった悲しみは

やがて元のところへ戻り、

首元に悲しみの数だけ並びます。

綺麗なものを手にする人間のよろこびと、

悲しみの沈んだ海の深さと、

その差の分だけいっそうと真珠は強く輝くのです。

悲しんだ分だけ人が美しくなるのは

つまりこういう理由なのです。

そして、私たちの悲しみを抱いた貝は

甘くやさしい味わいとなります。

母なる海では貝たちが

今日も悲しみを慰めています。